(後編)
(質疑応答の続き)
――コスタリカに対して援助をする国のなかにオランダやデンマークがある。そういう国が上位にあるのは持続可能な発展を支えるためか?
3月20日にコスタリカ政府が声明を発表し、ホワイトハウスのWebによれば、アメリカを支持する国のリストの中にコスタリカが入っている。アメリカと中米各国との間に貿易協定が構想されいるが、関連があるからか?
E:持続可能な開発についてだが、今質問された方のアプローチは環境についてですね?
デンマークの中米の国向けの援助は、大部分がニカラグアだ。コスタリカは中進国にあたるので、比較的援助はいらないからだろう。オランダからの援助はたくさんある。オランダが援助しているプロジェクトとして、生物学の機関と協力してやっているものがある。コスタリカにある豊富な自然的資源−動物・植物・虫など−は毎日新種が発見されている程豊富で、この調査活動に対してオランダが援助している。日本政府とも話しているが、生物資源の分類という知識を他国にも導入していただけるし、有用な知識なので活用していきたい。
2つ目の質問は特に面白いものだ。ここでは個人的な意見を述べる。学術的な場で話をしていることだし、アカデミックな見地から意見を述べさせていただく(政府の意見ではない)。
外交を効果的に行うには、原則論と国益の両方のバランスが必要だ。原則論だけでも利益だけでも外交はうまくいかない。
コスタリカはアメリカ支持の結論を出すまで、戦争が始まるかもしれないというギリギリの時までかなり国連に義理を立て、国連の指示に最後まで従おうとした。スペイン語を読める人はコスタリカ政府のHPにいって欲しい。そこには国連支持するということが書いているはずだ。
フセインが世界のためにいいことをやっていると思わないが、我々は国連の枠内で問題を解決し、事態をいい方向に向かわせる可能性を信じているし、敬意を表していた。だがアメリカはスペイン、イングランドより近しい友好国だ。地理的に近く、コスタリカの貿易の50%近くをアメリカは握っている。観光客の6割はアメリカ人だ。何か大きい災害が起きるたびにアメリカに助けてもらっている。これが状況というものだ。
今回のケースは、例えば私の兄や友達ががよくない女と結婚する、我々はあんな女と結婚してはダメだよと忠告する、だが本人はそれでも結婚するんだと言い張る、それと同じだ。それでも結婚式に行くには友達や自分の兄だからだ。
他の中米の国々はアメリカに支持したが、我々は最後まで迷った。これ以上はいえないが、これを持って私の答えとしたい。
(ここで主催者が質問者に挙手を求める。質問を先に受け付け、まとめて答えてもらうという形式をとりたいという提案に対し、エチェベリア氏が「明日17時の飛行機で帰るので、15時までには空港に行っていなければならない、それに遅れるような質問だけはやめてくれ」と発言し、一同大爆笑。)
ライフル三重の滝
――コスタリカの憲法12条で「大陸間協定もしくは国防のためにのみ軍隊を組織することができるというのがあるが、中身は法律で決まっているのか?必要なときに軍隊をすぐ組織するために、普段から訓練を受けるとかそういう制度があるのか?
アジアからの移民も沢山いるとのことだが、日本からの移民はいるのか?日本から移民してきた場合、日本語で教育を受けるのは可能か?
エチェベリアさんはアメリカでMBAをとったが、その後外交官に転職した。MBAは重役になりたい人が普通やるものだと思うが、今外交官の仕事をしているのはどうしてか?
E:3つともいい質問だが、3番目は特にいい。
私たちも国家主権や独立を守るために武装する。ニカラグア紛争などで国際的な機関が機能しなかった場合、やはり自分たちで武器を持って自衛しなければならない。しかし軍隊が組織されるのは非常時だけで、終わったら解散する。
そのためのトレーニングはやっていない。
残念ながら日本企業の役員はいるが、日本人の移民は少ない。日本人学校があるのは覚えているが、卒業したらスペイン語の学校に行く。寿司はコスタリカでも人気だ。
3つ目の質問は、今日いる学生に関係があると思う。私は学士も修士もビジネスを専攻した。1976年に大学卒業したが、その時はここにいる多くの人は生まれていないと思う。大学を卒業したあと、コカコーラで働き始めた。
1978年に大統領選があり、その時の大統領が私に政策のプランニングよりも副大臣とした働かないかといわれたのがきっかけで、公共機関で働くようになった。
私がいいたいのは、何の教育を受けたのかが一生を決めるファクターではなく、何をしたいのか、何になりたいか、何で社会に貢献したいのかがすごく重要だ。そのためによい教育を受けたら、よい教育がどう考えるかを教えてくれるということだ。もちろん限界がある。この学校を出たからといって建築家や物理学者や獣医になれるわけではない。だが沢山の質問を受けてみて、あなた達はとても沢山の職業に向いていて、沢山の才能持っているということを保証する。
――昨年コスタリカを訪問し、その時の仲間と一緒にコスタリカの人たと手を携えて平和をめざす会を作った。私はWebサイトの管理を担当している。 アメリカのイラク攻撃について突っ込んだ質問をする。
先ほどの質問でだいたいのことはわかったが、コスタリカとして今回はどのような働きかけをし、アメリカがどんな返答をしたのか疑問だ。というのは、(返答内容によっては)これからの会の活動に関係すると思うからだ。答えにくいだろうが、お願いします。
E:あなたの質問とあなた方の会の活動に感謝する。日本とコスタリカをつなげる努力をしてくださって、これからも沢山の貢献をしてくださると思う。
アメリカとイラクの関係の時に私は日本にいたから、コスタリカ政府の意志決定に加わっていない。アメリカは仲間に加わったからといって、見返りを与えようということはないと思う。しかし権力者としてその地位にある限りは、意志決定をしなければならない。リトマス試験紙のように、友好国か否か試される関係だ。
どのようにニューヨークの裕福なトンの観光客を誘致ん。
――中米のことに詳しくないが、単純に疑問に思ったことを質問したい。戦争の絡みと関係があるが、中米はあめりの裏庭ということで、たえずアメリカの意のままになる政権があり、アメリカの意のままの政策をとるという地域だと認識している。1960年代にはキューバ危機があり、1989年にはパナマに侵攻したり、エルサルバドルの政権を代え、ニカラグアの反サンディニスタゲリラに活動させるなど、常にアメリカの意図が強く反映しているような地域だと認識しているが、その中でコスタリカが理想の憲法を持った聖域としてが存在しているのか、この50年間どうやって憲法を生かしてきたのか知りたい。そのことを� �ることが日本に通じるのではないか?政治的・経済的・観光的に深い関わりがあるアメリカとの外交的関係は、単純に素晴らしい憲法を持っているだけではやっていられない事情もあっただろうから、そのことについても聞きたい。
E:いい質問をありがとう。
アメリカとコスタリカの関係は、アメリカがコスタリカに直接介入するという形で影響を受けたことはなかった。それがキューバ・パナマ・エルサルバドルとの違いだ。ニカラグアやパナマみたいに軍隊が入ってくることもなかった。パナマは1903年、アメリカがパナマ海峡を作るためにコロンビアから独立させたし、キューバは米西戦争の結果1898年に独立したから、パナマやーバみたいにアメリカと特別の関係はない。私たちがアメリカに対する屈折した感情もないし、人々は普通に「アメリカ大好き」という感じだ。アメリカは軍隊のないコスタリカ、私たちの平和的な意図を歓迎し、評価している。アメリカもコスタリカが中米の国々のモデルになると考えている。
だがここで聞きたいのだが、今いったいどこの国がアメリカの影響から逃れているのか?影響があるということは、アメリカのいったとおりに何でもやるということではない。アメリカは京都議定書に加盟していないが、コスタリカは京都議定書に加盟している。コスタリカはICCに裁判官まで出しているが、アメリカは参加していない。このようにアメリカと一緒にやることもあるし、別にやることもある。だが先ほどのイラク戦争の例もある。そのような両面があると言うことだ。
――コスタリカは教育に力を入れているが、平和的手段による紛争の解決ということは、どうやって教えているか?これから学校や国際交流団体で生かしていきたいので、簡単で結構だから教えてください。
E:平和と発展のために力� �尽くすよう祈っている。
平和を教えるために、平和を何か独立した科目で教えるのではない。平和学の学問として専門的にそれだけを扱って教える場合は別だが、若い人を乱暴しないで交渉して、人の話に耳を傾け、平和的な考え方をもっと普遍的な意味で教える場合は、平和だけを独立して教えるわけではない。
これと対照的な教育は、例えば軍事的な国では学校の戦争が価値を全部教え、従わない生徒は罰したり銃殺する。平和だけを独立して教えるのではなく、ビジネススクールだったら、ビジネスの学校が平和的な教育を目的にすれば、その企業の社会的役割について教えればいいし、弁護士を育てる学校ならば司法制度を間違った方向に人為的な操作しないように教えることで、平和的な方法に向かう人を育てることはできる。それは倫理だと言うこともできる。
私たちは独裁者を愛するようにとは教えない。子供に人権を守り、人間の尊厳を大事にするよう教える。
カスケード国立レクリエーショントレイルを下回る
――先ほどの話を聞いていて一つショックを受けた。もともとコスタリカが持続可能な発展や平和について先進的な国だとは知っていた。だがショックを受けた理由は、平和憲法ができたのは内戦がきっかけだったということだ。過去に人類は国同士の戦争、内戦、革命、独立、制裁などいろんな名前で殺しあってきた。飛行機なども戦争のために作られ、発展も戦争と関係しているのではないか?だから人間は本当に「殺す」ことをやめられると思うかどうか、そう思うのだったらそれはなぜか?
E:私は理想を語りたい人間だ。理想がないと、どこにいったらいいのかわからないからだ。まったく現実的に生きたり、ドグマだけを語って生きてい るのは、人にい い影響を与えられない。私は楽観主義で理想主義だが、リ アリズムの視点を持っている。私は発展のために人を殺しあうことは必要な いと思っている。
一人の人を殺すのは大変なことだ。例えばここで銃を持って「手を挙げろ!」と言って手を挙げさせた時点でまだ相手は生きているが、本当に銃を撃 ってしまったらその人は死んでしまうのだ。私たちは人間であって一方では動物であると同時に理性を持ち、考えることができる。人間には両方の面があるが、動物の面は失うことはできない。生殖のためには動物でなければいけ ないが、国連の平和大学で教えているように理性を向上させて、悪い意味での動物的なところはなくしていくように努力していかなければならない。これは人類の挑戦だと思う。私たちは自分を変えていくべきだ。未来の紛争はもっともっと破壊的になっていくだろう。イラク戦争 を見てもわかる。
私たちは互いに忍耐力と尊敬をもって、人と社会、国がお互いを尊重し、考えを認めていく能力を持つことで変わると思う。お互いが何を欲しているのかを知る必要がある。私たちはそうして正しい道を歩んでいくのだと思う。愛情は相手から取り上げるものではなく、与えあうものだ。奪い合うとお互いに破壊的な関係になってしまうが、与えあうと本当にいい関係を作ることができる。
本当に殺しあうことをやめられると思いますかという質問についてだが、私はそうなることを望んでいるし信じているが、それにはものすごい努力が必要 だが、悪くとらないでほしい。戦争の中継を見るだけでも、戦争がヒドいというのがわかるはずだ。国が「お前、戦地に行け」といわれて外国に送られ、そのまま異国の地で二十歳で死んでしまうということは、コスタリカ人だって日本人だってイヤだろう。戦争で死ぬのはやっぱり肯定できない。
(今の世の中が悲観的な方向に進むようなことがあっても)絶対に諦めてはいけない。
――軍隊のない平和な国造りの成功をしたコスタリカの経験として、どうやって国際社会にフィードバックしていきたいと考えているのか?
また日本は平和憲法を持ちながら、武力を持って平和をもたらすことを選択したが、大勢の日本国民はこれに反対している。 これを乗り越えて憲法の精神である、世界平和のためにどう寄与していったらいいかについて質問したい。
E:質問者の考え方は非常に正しいものだと思う。軍事的に弱いことが、逆に国を強くする。それはパラドックスのようなことでもあるが、現実でもある。フィールドバックとして国際社会に対して何をやっているかというと、こすは国際問題で人権を擁護することについては強い国だと思う。米州機構(OAS)の中でも強い立場に立っている。他の中南米諸国は民主的ではないという点で、コスタリカが主導的な立場を持っている。パナマもコスタリカの影響で、つい最近軍隊をやめた。ノリエガ将軍のあと、アリアス大統領が説得をして軍隊を廃止した。パナマは警備隊を持っているが、それは軍隊とは違うも のであることは皆さんもおわかりだと思う。
今のイラクの状況は軍隊をなくしていく方向に向けていいチャンスだ。フセインが自分で武装を強めると国民も苦しみ、国も破壊し、権力層も苦しむ。だから武装解除していくのに役立つだろう。今の地域に不必要な武器がありすぎる状況だからだ。
小泉の対応は問題だと思わない。日本は一週間前と同じく、平和に向かっている国だと思う。時には紛争解決のために現実を見なければいけないこともある。戦略的地位は日本を戦略的に変えていくと思う。日本は世界平和に貢献していると思うが、もっとやるべきことがあるとすれば、他国と共同で何かをやることだ。コスタリカから学ぶこともあるだろうし、日本が教えてあげられることもあるだろう。
――武力紛争と独裁政権の多かった中米でコスタリカが軍隊を廃止して50年近く維持し続け、環境政策や人権政策も非常に参考になるだろうと思う。国際人権条約についても、コスタリカはスゥエーデンやノルウェーなど北欧などと共に批准している事は知っている。1926年の人権奴隷条約もコスタリカは批准してい るが、イラク・北朝鮮・アメリカ・日本はいまだに批准していない。この条約を批准するのは、政府がやる気になれば簡単にできると思うが、何かアドバイスがあったら教えて欲しい。
E:(それらの条約を批准しなかったことを)反省していくことが社会として大事だと思う。
――エチェベリアさんが、何か英文でお書きになったものを出版されているものはありますか?また、コスタリカについてお薦めの本を教えて欲しい(英語であることを期待する)。
E:沢山論文を書いているが、ほとんどは経済や社会的発展について(のテーマj)、政治参加についてのものだ。新聞のコラムニストを永年勤めてきたが、単行本を出す能力は自分にはまだないと思う。コスタリカに関する英語の本は、(検索エンジンの)グーグルで検索したら沢山出てくる。国連の平和大学も、コスタリカに関する本を出していると思う。アメリカの学者も、私が今日話したテーマで英語の本を出したことを覚えているから調べてみてはいかが?
(今日はこれで)この講演会を終わるけれど、終わるにあたって皆さん長い時間聞いてくださいました。ここに来ることができて、コスタリカ人としてとても光栄だ。皆さんのような方に会えて、人類としての疑問を向上心を持って沢山の質問をしてくれた。皆さんはこれからの世界を担っていく人だと思う。世界を変えるのは難しいが、がんばっていきましょう。
今日のスタッフ・通訳にもお礼を言いたい。 本当にありがとうございました。
最後に一言。
皆さんは特権階級に所属している人々だ。世界中の40〜50億の人々の中で、皆さんが特権階級に位置しているからこそ持っている責任もある。そのことをよく覚えておいてください。
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